Yasushi Sugimoto

Texts

003. 邂逅

杉本靖

 神田の錦町にある喫茶店横の小さな角地に、おそらくは子供が乗る遊具なのであろうパンダがいて、以前からそこを通るたびに「今日もいるな」と思っていた。

神田にいるパンダ第一号

 可愛く思えたり、淋しく思えたり、マヌケに見えたり、哀しみを放っているように見えたり……。いつもいろんな感情が渦巻くのだけれど、そのうちに「彼はわれわれになにかを伝えにきたのではないか」と感じはじめた。

 そしてつい最近、隅田川近くを歩いていたら彼の兄弟がいたのである。

杉本靖、パンダ第二号と対面

 まったく違う場所で兄弟に出会えたことがうれしかった。これはそのことを熱弁していた時に撮られた写真である。

 まるで双子のようで、彼がここに移ってきたのではないかと一瞬思ったほどだった。初対面なのに再会のような、よくある「はじめて会った気がしない」というやつだろうか。

 ところが不思議なことにこの次男 (勝手にそう決めた) には長男のような悲哀が感じられないのだ。外見的な区別はほとんどつかないのに、内面はかなり違うのではないか、そんな印象を持った。

 そしてこの話、これだけでは終わらない。

 数日後、食事に誘われ普段は行くことなどまずない練馬に出かけたのである。その時に住宅街を歩いていたら突然小公園が現れ、なんとそこには三男が待っていたのだ。

公園での杉本靖とパンダ第三号、突然の邂逅

 この時は妙に複雑な気分になってしまい、前回とは打って変わって神妙な話しかたをしていたと思う。その時に撮られた写真である。

 三兄弟が俺に伝えたかったことはなんなのだろう。ここにきて次男と三男が一気に登場したのはどうしてなのだろう。長男のメッセージをなかなか理解しない俺にしびれを切らしたからだろうか。

 ……いや、こんなのは客観的に見れば「公園設置用の子供が乗るためのパンダ遊具が設置されている場所のうち三つに偶然出会った」というだけの話なのはわかっている。

 それでも、そういうことじゃないんだと思ってしまう。思いたいのかもしれない。

 そして、どうしてそう感じるのかは俺にも皆目わからないが、四男にはあまり会いたくない。